球古武術保存振興会で使用する8種の武器
棒 Bo
大別して9尺、6尺、3尺の長さがあります。通常は6尺棒を定寸とし赤樫・白樫製を稽古でも使用しています。棒の中心部の太さは約3cm。両端の先端は約2.4cmと先細になっており、基本の握りは棒を三等分に持って使用します。
眞境名安興(まじきな・あんこう)の『沖縄一千年史』によれば、三山割拠の戦国時代に当時の按司(あんじ)が使用した棒の模型があることが記されています。棒師団等も編制されているように棒の出現は武器の中で最も古いものです。久米三十六姓の琉球入りから見ても棒は中国の影響のもとに沖縄古来の棒法が育ち完成したものと思われます。
残されている8種の武器を使用する四十余の型のうち22が棒の型です。それだけよく研究されたものであり”棒に始まり棒に終わる”というほど、その奥は深いものなのです。
棒術は前後左右、そして上下に約180cmの棒を自在に扱い、防御や攻撃の体勢をとり、攻防の目的を効果的に行います。この技法は古来の琉球棒術の達人たちが、師から伝え受け継ぎながら、自らの修練によって発見・体得した効果的な攻防の法則です。この効果的な法則を、覚えやすく、伝えやすくするために生み出されたものが、棒術の「型」です。
棒の種類には、そのほか、船の櫂を使用するエークがあります。相手に砂をかけて目つぶしにして攻撃を行う処に特色技を有しています。
棒術は8種の武器の中で最も良く研究された武器であり、白眉の存在であります
釵(サイ) Sai
釵は古くは手裏剣の源と同じく、仏具の三鈷・五鈷などの変遷を経由して伝わった中国系の武器と考えられています。先の尖った鉄製の丸棒で作られ、握りの前に鉤状の二股(とって)がつけられ、柄頭は切子型球形をしています。手首と親指と人差し指の使い方が重要になる武器です。
一対の釵を左右の手に持ち、片方で受け、もう一方で突いたり打ったり引っ掛ける攻撃を行います。空手の手刀の動きに似ています。釵には8つの型が残されています。
トンファー Tonfa
元々は豆殻を叩く民具だったという説もあります。空手でいえば裏拳、肘当ての動きに相当します。船の櫓の握り手の部分を残して端から1尺5寸にくらいに切ったような形をしています。
釵と同じように一対のトンファーを左右の手に持ち、一方で受けてもう一方で突いたり打つなどの攻撃を行い、攻防に備えます。「浜比嘉(はまひが)のトンファー」、「屋良小(やらぐわ)のトンファー」という型が残されています。
ヌンチャク Nunchaku
ブルース・リーの映画で一躍有名になりましたが、当会では伝統の使用法を教授しています。紐の柔らかさをうまく利用した武器です。
長さ約36cm、直径約3cmの短棒の一方の端に穴をあけ、2本を紐で繋いだものです。昔は、藤や⽩⾺の尻尾の⽑を編んで紐を作っていたといわれています。
ヌンチャクは元来、棒の範疇に属します。相手が攻撃してくる瞬間に体をさばき、同時に攻撃する攻撃主体の武器です。折りたたむことができるので隠し武器として有効です。
双節棍のほか三節棍、四節棍がありますが型としては双節棍を使用する2つと、三節棍を使用する型一つの計3つが残されています。
鎌 Kama
琉球古武術の中で刃が付いた武器は鎌だけです。釵・トンファーと同じく一対の鎌を左右の手に持ち、一方で引っ掛けてもう一方で打ったり切るなどの攻撃を行い攻防に備えます。空手でいえば掛け手、くり手の動きに相当します。
鎌には「当山(とうざん)の鎌」「鐘川(かにがわ)の鎌(小)」「鐘川(かにがわ)の鎌(大)」という3つの型が残されています。
棒・鎌・トンファー・ヌンチャクもそのほとんどが沖縄においては農具の変形、または生活の必需品の中から工夫されたものと考えられています。
鉄甲 Tekko
手の甲にはめる鉄製の金具で外側に突起が備わっているのが特徴です。
突起を用いて相手をスラッシュしたり、突いたり打ったりします。空手の動きを最もストレートに応用できる武器です。
鉄甲には「前里(まえざと)の鉄甲」という型が残されています。
ティンベー Tinbe
盾を一方の手に持ち、もう一方の手に短槍を持って攻める武器です。
盾をティンベーといい、短槍をローチンと呼びます。これらを組み合わせたものをティンベー術と呼んでいます。
ティンベーは一般に亀、または藤のつるを編んでヤギの皮をかぶせたものを使用したといわれています。ティンベー術には「鐘川(かにがわ)のティンベー」という型が残されています。
スルジン Surujin
鎖の片方に分銅がつき、もう一方に一握り程度の柄が付いた武器です。
鎖で相手の武器や首を絡めて、もう一方の柄で突いたり、分銅を相手に投げつけると同時に柄で突くなどの攻撃を行い攻防に備えます。鉄甲と同様に隠し武器として利用されます。